国語 第2章
小説読解
要点編
【既習/完成/最低25問】心情・情景。
① この章のねらい
小説は、人物の行動・会話・情景を通して心情の変化を描く文章です。気持ちが直接書かれない場面では、前後の出来事としぐさが根拠になります。人物関係と場面の変化を整理し、誰の視点で描かれているかを確かめる。感想ではなく本文の表現から答えることが重要です。
- 人物関係を整理できる
- 心情変化を追える
- 行動から心情を推測できる
- 会話の意図を読める
- 情景の効果を説明できる
- 比喩を説明できる
- 根拠付きで記述できる
② 図と説明
下の図を順に見てください。各図の下に、その図の読み方を書いてあります。
図 1. 心情曲線

表情・行動・台詞の根拠→心情語→変化。図では、矢印の始点と終点、色分け、並び順を順に追い、本文のどの判断に対応するか確認する。
人物関係を先に置く
登場人物の名前、立場、互いの関係を余白に図で書く。会話が多い作品ほど、発言者を取り違えると内容が崩れます。関係が変わる出来事には線を引き、前後を比べる。誤概念は登場人物の名前だけ覚えて関係を読まないこと。例:誰が誰に何をしたかを矢印で書く。入試の心情問題は関係の変化を根拠にすることが多い。
図 2. 人物の関係

誰が誰にどう動いたか。図では、矢印の始点と終点、色分け、並び順を順に追い、本文のどの判断に対応するか確認する。
心情は根拠3列で読む
想像だけで心情を書かない。列1:表情・行動・台詞の根拠、列2:そこから言える心情語、列3:前後での変化。心情曲線(novel-emotion-stages)で段階を追う。「初めは」「ところが」「そのとき」は変化の合図。解答は「根拠→心情」の順で書く。誤概念は心情語を根拠なしに想像で補うこと。例:表情・行動・台詞を三列にメモして心情語へつなぐ。入試では「本文のどこからそう読めるか」が採点の中心になります。
図 3. きっかけの論理

出来事→心情の因果を見る。図では、矢印の始点と終点、色分け、並び順を順に追い、本文のどの判断に対応するか確認する。
行動は心情の証拠
黙る、視線をそらす、手を握るといった描写は、言葉にされない気持ちを示す。行動だけから感情を断定せず、直前の会話や状況と合わせる。解答には心情と、その根拠となる行動を両方書く。誤概念は行動描写をただの出来事として流すこと。例:ドアを強く閉めた→怒りや拒絶の証拠。入試では行動から心情を推論させる設問が定番です。
③ 続きの説明
4. 会話には本音と建前がある
人物は本心をそのまま言うとは限らない。言いよどみ、繰り返し、短い返事、発言後の地の文に注意します。相手との関係や言えなかったことまで考えると意図が読める。誤概念は台詞の字面だけを人物の本心とすること。例:笑顔で「大丈夫」と言いながら手が震える。入試では台詞と地の文のずれを問うことが多い。
5. 情景は雰囲気を作る
雨、暗さ、音、季節などは、場面の空気や人物の心情を強める働きをします。情景と心情が必ず同じとは限らないので、直前後の出来事を確認します。「何を描写したか」だけでなく「どんな効果か」を答える。誤概念は天候や景色を飾りと無視すること。例:急な雨が不安や転換の合図になります。入試では情景と心情の対応を説明させる記述が出る。
6. 視点人物を確かめる
地の文に見える出来事も、特定人物の見聞や判断として描かれることがあります。「〜と思った」「〜に見えた」は視点の手がかりです。視点人物の知らない情報を勝手に補わない。誤概念は語り手=主人公と決めつけること。例:三人称でも特定人物に近い視点があります。入試では「誰の目から見た描写か」が心情の根拠になります。
7. 比喩は共通点を述べる
「〜のようだ」は直喩、「〜だ」は隠喩の形をとる。何を何にたとえたかを示し、二つに共通する性質を説明します。字面どおりの事実として読まない。誤概念は比喩を字義どおりに解釈すること。例:「石のように黙った」=硬い沈黙の共通点。入試では比喩が表す心情・様子を本文語で答えさせる。共通点を一文で言えない比喩理解は不十分です。
8. 場面転換を捉える
時刻、場所、登場人物の入れ替わりで場面を区切る。場面が変わると、人物の目的や心情も変わることがあります。問題の傍線部がどの場面にあるかを先に確認します。誤概念は時間や場所の変化を見逃して同じ場面として読むこと。例:「翌日」「駅を出て」で区切る。入試では転換前後の心情変化が問われやすい。
9. 理由は原因までさかのぼる
「なぜそうしたか」は、直前の一文に答えがない場合があります。人物がその行動に至るまでの出来事を追い、きっかけと判断を分ける。結果だけを理由として書かない。誤概念は直前の一文だけを理由とすること。例:きっかけの出来事まで戻って因果をつなぐ。入試の「なぜか」は原因側の本文根拠が必要です。
10. 人物像は複数の言動で示す
人物像は「優しい」などのラベルだけでは弱い。どの場面で何を言い、何をしたかを二つ以上集める。行動から分かる性格を「〜な人物」とまとめる。誤概念は一場面の印象だけで性格を断定すること。例:優しい台詞と冷たい行動の両方を見る。入試では人物像を複数根拠で書かせる。一場面だけで性格を決めつけない。
11. 題名も読む手がかりになる
題名は作品の中心となる物、人、出来事、象徴を示すことがあります。読み終えた後に題名へ戻ると、繰り返し描かれた要素に気づける。ただし題名だけで作品の意味を決めず本文で確かめる。誤概念は題名を飾りとして無視すること。例:題名の語が本文の象徴物と重なります。入試では題名の意味を作品全体から説明させることがあります。
12. 記述は本文語で支える
心情を答えるときは「悲しい」だけで終えない。「〜ので、〜という気持ち」の形にして根拠を添える。本文の重要語を使うと、根拠のない感想になりにくい。誤概念は自分の感想語だけで答案を埋めること。例:根拠に本文の語を引用し心情語へつなぐ。入試の部分点は本文根拠の有無で分かれます。根拠のない心情語は減点対象になります。
13. 沈黙と間を読む
人物が答えずに黙る場面には、迷い、驚き、ためらい、言えない事情などが表れます。沈黙の意味は一つではないため、その直前に投げかけられた言葉を読む必要があります。沈黙の後で人物が取った行動も、心情を判断する手がかりになります。会話文だけを抜き出さず、地の文にある「しばらく」「ふいに」などの時間表現も確認します。解答では「〜と言われて戸惑い、返事ができない気持ち」のように状況と心情を結ぶ。
14. 象徴的な物を追う
作品内で同じ物が繰り返し現れるとき、それは人物の記憶や関係、テーマを象徴することがあります。物の意味は初登場時と終盤で変化する場合があるため、登場する場面を比べる。一つの物に勝手な意味を与えず、人物の反応や周囲の描写を根拠にします。たとえば渡された手紙なら、内容だけでなく受け取る人物の行動が意味を決める。題名と重なる物は、作品全体の主題と結び付けて考える。
15. 心情根拠の3列メモ
傍線部の心情を問われたら、余白に三列を作る。①根拠(表情・行動・台詞の引用)②心情語③変化(前→後)。曲線図(novel-emotion-stages)に位置を対応させると、一場面の固定感情で答えなくなります。根拠のない「悲しい」「嬉しい」は減点対象です。誤概念は心情語を先に決めて本文を合わせること。例:表情・行動・台詞の三列から心情を帰納します。入試の小説では根拠列の明示が記述点につながる。
16. 語り手と登場人物を混同しない
「私」が語る一人称でも、語り手が全ての真実を知っているとは限らない。語り手の感想と、別の人物の本音は区別して読む。三人称でも、特定の人物の視点に寄り添って描かれる場面があります。視点が切り替わると、同じ出来事の意味が変わることがあります。心情問題では、誰の視点で書かれた文かを先に確定します。
17. 時間の経過と回想を整理する
小説では現在の場面と回想が交錯することがあります。時制や時間を示す語、場面の区切りに注意し、出来事の順序を年表のように並べる。回想の中の心情と、現在の心情を混ぜると設問を誤る。回想が挿入される理由は、人物の変化や秘密を示すためであることが多い。順序を整理してから、変化のきっかけを探す。
18. 対になる人物で性格を読む
対照的な二人を並べることで、それぞれの性格や価値観が際立つ。一方の行動だけを見て断定せず、もう一方との違いを観点ごとに並べる。呼び方、距離感、言葉遣いの差も人物像の根拠になります。対比が崩れる場面は、関係の変化や成長のサインであることが多い。記述では「Aは〜だが、Bは〜」と軸をそろえて書く。
19. 余韻のある結末を読み取る
結末で全てが説明されない小説もあります。残された行動や情景から、その後の可能性を本文の範囲で推測します。本文にないハッピーエンドや悲劇を勝手に足さない。設問が「どう思うか」ではなく「どのように描かれているか」なら、表現の根拠を優先します。余韻は、読者に考えさせる効果として説明できます。誤概念は結末をあらすじの終わりとだけ見ること。例:残された情景や沈黙が主題を示す。入試では結末の効果や題名との対応が問われます。
受験で押さえる(この章)
漢字は読み↔字↔意味、同音は場面で切る。古典は接続→意味の順。暗記リストを眺めるだけで終わらせない。
必暗慣用句・四字熟語
字義どおりに記さない。場面を一文で言ってから意味を言う。
- 手が足りない人手不足
- 手を焼く扱いに困る
- 歯が立たない対抗できない
- 鼻が高い誇りに思う
- 目がない大好きで自制できない
- 目を通すざっと見る
- 水を差す雰囲気を壊す
- 油を売るムダ話で時間をつぶす
- 異口同音皆が同じことを言う
- 以心伝心言葉なしで通じ合う
- 因果応報行いの結果が返る
- 有言実行言ったことを実行する
- 紆余曲折複雑な経緯
- 雲泥の差大きな差
- 永続可能長く続けられる※SDGsは持続可能
- 臨機応変場合に応じて対応
戦い方国語の戦い方
漢字・語句を先に片付け、読解は設問の問い方を先に確定する。
- 手順漢字・語句を先に片付け、失点を止める
- 手順読解は設問の問い方(なぜ/どういうこと)を先に確定してから本文へ
- 手順記述は字数と「誰の/何について」を先に枠取りし、本文の語句で埋める
- 手順見直しは漢字の同音異義と、記述の条件漏れだけに絞る
- 手順毎日15分:学習中の単元の「受験で押さえる」を音読+書き
- 手順毎日30〜50分:弱点単元の⑤⑥または⑦を1セット
- 手順近い用語・近い年代・近い数値の取り違え
- 手順問題文の一部だけ合っていて結論がずれる選択肢
⑤ 公式・用語
| 名称 | 内容 | メモ |
|---|---|---|
| 心情推測 | 出来事 → 行動・会話 → 心情 | 本文の根拠を添える。 |
| 比喩 | AはBのようだ → AをBの性質で表す | 共通点を述べる。 |
用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 心情 | 人物の気持ち |
| 行動描写 | しぐさや動作の描写 |
| 情景描写 | 自然や場所の描写 |
| 視点 | 物語を見る立場 |
| 比喩 | 別のものにたとえる表現 |
| 場面 | 時・場所・人物で区切る単位 |
| 人物像 | 言動から分かる人物の特徴 |
| 地の文 | 会話文以外の叙述 |
⑥ 手順
心情線
- 出来事を順に書く
- 言葉と行動を抜く
- 心情の変化を矢印にする
記述解答
- 人物を確定する
- 根拠を探す
- 心情と理由を結ぶ
章末の定着確認
- この章の重要語を三つ声に出す。
- 例題のうち一題を、答えを見ずに根拠から再現します。
- 誤答しやすいポイントを一つノートに残す。
⑦ 例題
途中の考え方を追うための例です。演習は問題編で行います。
「健は返事をせず、窓の外を見た。」から読める心情は。
考え方
返事をしない、視線を外すという二つの行動が根拠です。断定を避け、会話への消極性として答える。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:話したくない、または戸惑っている心情
不安な主人公の直後に「空は急に暗くなった」とある効果は。
考え方
暗い空の情景が、不安という心情と響き合う。天気の説明だけで終わらせない。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:主人公の不安や場面の緊張を強める効果
「彼の声は氷のように冷たかった」を説明しなさい。
考え方
「〜のように」がある直喩です。氷と声の共通点である冷たさを態度へつなげる。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:声を氷にたとえ、冷たく感情が感じられない様子を表す。
友人の話を聞かず去り、後で困っていたと知った主人公が謝った理由は。
考え方
謝罪の原因となる二つの出来事を時順にまとめる。困っていたという結果だけでは不足します。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:友人の話を聞かずに去り、困っていたことを知ったから。
自分の傘を忘れた花子が、雨で困る子に傘を渡した。人物像は。
考え方
傘を渡した行動を根拠にします。「優しい」だけでなく、状況と行動を入れて人物像を具体化します。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:自分も困る状況で他者を助ける、思いやりのある人物。
「大丈夫」と言った直後、主人公がかばんの持ち手を強く握った。心情を答えなさい。
考え方
発言だけなら安心しているように見える。しかし「強く握った」という行動は緊張の表れです。言葉と行動のずれを根拠に、本心を推測します。①まず設問が何を問うかと条件語に印を付けます。②次に文・本文・語形のどこが答えの根拠かを対応させ、途中の判断を一つずつ説明します。③最後に主語、時制、条件、因果関係が問題文と矛盾しないかを検算し、似た選択肢を除いて答えを確定します。
答え:不安や緊張を隠し、平静を装おうとする心情。
⑧ 入試での使われ方
- 人物名に印を付ける
- 心情語がなくても行動を探す
- 会話後の地の文を読む
- 情景を心情と結ぶ
- 根拠を二つ集める
- 設問の問い方(なぜ/どういうこと/効果)を先に確定してから本文へ戻る。
- ⑤基本:暗記パック漢字・語句 ⑥標準:リセマムB読解+言語事項 ⑦応用:本アプリ記述(C帯の字数・根拠密度)
- 本アプリ /exam-ready の漢字・慣用・四字を先に固めて失点を減らす
⑨ よくある誤り
- 感想で答える
- 発言者を取り違える
- 情景を背景で終える
- 一語で心情を決める
- 比喩を字義通りに読む
- 時系列を混同する
- 理由を書かない
- 本文外を補う
⑩ 確認
次ができたら問題編へ進んでください。
- 人物関係を整理した
- 場面を区切った
- 視点を確認した
- 変化を追った
- 行動を根拠にした
- 会話の意図を考えた
- 情景の効果を読んだ
- 比喩の共通点を示した
- 理由を添えた
- 本文に基づく
- 追加ポイントの内容を自分の言葉で説明できる